一人のハイクや森歩きには多少の孤独感が付き纏う、当然ながら動物の声や林のきしむ音に恐怖感を覚える時も暫しあるものだ。
普段の生活とは全く違う自然のアプローチは、同時に知恵や状況に合わせた思考力を与えてくれるのだ。
そんな山の孤独感を忘れさせるほどの力強い轟音と昔ながらの美しいフォルムで私に安心感を与えてくれる物、それがオプティマス製のスベア123Rなのだ。
クラシカルな見た目とコンパクトなサイズ感
先ず真鍮製のクラシカルな雰囲気とガソリンストーブの中ではかなり小ぶりなサイズ感で持ち運びも億劫にならない大きさがとても気に入っている。
ガソリンストーブと言えばコールマンのスポーツスターやフェザーストーブなどが有名だが、スタッキングできるコッフェルも限られるためハイクに持っていくには少し嵩張ってしまう。
その為か今の時代はガスストーブやアルコールストーブが重宝されて、ガソリンストーブと言えばキャンプや真冬のハイク位にしか用いられなくなってしまったイメージがある。
その点このスベア123Rは横幅がガスストーブ用の110缶ガスとほぼ同じサイズなので多用なコッフェルとスタッキングすることが可能なためザックの中でも場所を取らないのだ。
ガソリンストーブなのにポンピングが必要ない
そしてスベア123Rの特徴でもあるポンピングをせずにタンクの上にある溝にアルコールやガソリンを垂らして、直接火をかけてタンクに圧をかけていくプレヒートがある。
普通のガソリンストーブであればポンピングでタンクへ圧をかけ、圧のかかったタンクからガソリンが噴出して火を点ければやがて火力が安定してプレヒートが完了する仕組みなのだがポンピングが出来ないスベア123Rではタンク内のガソリンを噴出させるために直接火にかけてタンク内の圧を上げなければいけないのだ。
この工程が億劫でスベア123Rを使わなくなる人も少なくはないと思う。
しかしこのプレヒートも工夫をすれば難しくもなくポンピングをする必要も無いのでプレヒート中に他の事を出来るようになるのだ。
このやり方は私のオリジナルのやり方なのだが写真の様なステンレスの棒にスチールウールを巻き付けた物を作るととても便利だ。
この棒のスチールウールの部分をタンクの燃料口に差し込んでガソリンをたっぷり吸わせておき、あとは組み立てたスベア123Rのタンクの上に火を点けたこの棒を乗せておくだけである。
このやり方で真冬以外は一回の火付けでプレヒートが完了する、プレヒートが足りない場合は噴出口を開きタンクから少しガソリンを垂らしてもう一度火を点ければ真冬の雪の上でも本調子で燃焼してくれる。
このやり方であれば効率よくストーブに点火することが出来るので、私の場合は縦型のコッフェルを用いるハイクの時には大概はスベア123Rを持っていくことが多いのである。
スベア123Rにスタッキングすべきコッフェル
そしてここからはスベア123Rにスタッキングするコッフェルについてなのだが、そもそもスベア123Rには300㎖程度のアルミのコッフェルが付いているのだが料理を作ったりするには少し小さいので大概は持っていくことは殆どない。
スベア123Rにスタッキングするコッフェルでよく見るものは、スノーピークのトレック900やスベア123Rと同ブランドのオプティマスのテラなどがある。
しかしトレック900位のサイズだとソロ用としては少し大きく感じる事があり、ペアで料理を作るには丁度良いのだがソロハイクにはあまり持っていかなくなってしまった。
そこでソロ用にスタッキングするコッフェルがスノーピークのチタントレック700なのだ。
このトレック700は他のコッフェルとは違いスタッキングする時にスベア123Rに被せる形でスタッキングするのだ。
先ほども記した様にスベア123Rは110缶ガスとほぼ同じ大きさなのだが数ミリ大きいので、110缶ガスがぴったり収まるトレック700にはタンク側が入らないので頭側から被せる必要があるのである。
このトレック700は縦型のコッフェルなのでスパゲッティを茹でたり、パウチを温めたりするのが得意に感じる。
しかしこのトレック700の最大の特徴は、一風変わった蓋の形状にある。
写真でも確認出来るように片方を爪で引っ掛けてもう片方はハンドルと一緒に抑える事が出来る形状になっており、引っ掛ける側に小さな湯切り口が付いている。
この湯切り口がとても優秀で例えば、最初にパウチのオカズを湯煎してその後にスパゲッティを茹でてゆで汁をシェラカップ等に湯切りすれば、これでオカズとメインのスパゲッティとゆで汁で作ったスープの三品を一度の湯沸かしで作る事が出来る。
そしてこの湯切り口は殆ど液だれしないので、コーヒーを淹れる際のドリップケトルとしてもとても優秀なのだ。
このオプティマスのスベア123Rとスノーピークのチタントレック700を持って山を散策すれば独特の孤独感や自然相手に遊ぶ者への戒めの様にも取れる恐怖感を全て払拭することは出来ないかもしれないが、昔ながらの真鍮製の少し癖のあるストーブとチタン製の機能美に満ちたコッフェルにほんの少し勇気や安堵感の様なものを感じる事が出来るのではないだろうか。