焚き火を弱め幕内に戻る頃、火照った体がまた芯から冷えて行くのを感じシュラフに潜り込みまた暖をとり直す。
一度冷えた体を再び温めるのは容易ではなくシュラフの中で震えながら口から暖かい空気を吐き入れゆっくりと温める、冬の醍醐味ではあるものの体の芯まで温めるには相当な時間がかかる。
日によっては朝まで寒さとの戦いになることも暫しあり、殆ど眠れなかった事もざらにある。

冬のヒリヒリとした乾いた空気と美しい星空を眺めながら焚き火を楽しみ、ゆったりと至福の時間を過ごす。
そんな真冬のキャンプには贅沢さと過酷さが表裏一体でのしかかるものだ。

天候や風の影響で一日の殆どをテントの中で過ごす事も容易にあるのもアウトドアの楽しみの一つである。

そんな時に私を飽きさせずに体の芯から温めてくれる心強い冬の相棒が武井バーナーのパープルストーブ301aである。

クラシカルな真鍮製のフォルムから噴き出す青いガス火とスプリング状のストーブが真っ赤に熱を持ち、顔が火照る程の熱を放出し始める。
たちまち幕内は一気に温まり、雪で湿っていたテントもパリッと乾いてくる。

このパープルストーブを持ってキャンプに出掛ければ、また違った幸福感を味わえるのだ。

見た目にも美しい武骨な真鍮製のストーブ

先ず真鍮製の昔ながらのルックスで見た目にも美しいストーブなのだが、その強靭な見た目の通り一つ一つのパーツの作りがしっかりと作られておりなかなか壊れない末永く使えるガスストーブなのだ。

私のパープルストーブはもう13~14年位使っているのだが色々と酷使してきたが未だに現役で使っている。
例を挙げれば、夜釣りの際に蹴り倒した事もあるし移動中の車の中で倒れてしまった事も暫しある。

燃料がコスパの良い灯油専用

次に燃料についてだが最近ではあまり類を見ないが灯油専用のストーブなのだ。
灯油であれば買う事も容易で車で持ち運ぶにもとても安全だ、他のホワイトガソリンなどに比べても金額や保管する事を考えるととても重宝する。

そしてこのパープルストーブの本当に素晴らしい所が、タンクに燃料計が付いている所だ。
最近のストーブには割と付いている物も多いが、古いビンテージストーブなどには付いていない物が多く一旦タンク内の燃料を取り出してから満タンの量を計って入れなおしたりする事を考えるととても重宝している。

ポンピングとプレヒートには骨が折れる

そしてパープルストーブの一番の難所がポンピングとプレヒートかと思う。
ポンピングに関しては別売りのバルブで自転車の空気入れで空気圧をかける事が出来るが、キャンプや山に用いるには少しがさばる。
ポンピングで空気圧をかけるには最低でも100回以上はポンピングが必要になってくる。

そしてプレヒートがとても大変な作業になる。
先ず燃料が灯油なのでガソリンの様に簡単には燃えないので先ほどのポンピングをしてから噴出口を開きそこに火を点ける。
調子が良ければそのままバーナー部分を温めてくれるのだが、ミスト状になった灯油なので不安定ですぐ火が消えてしまう事もよくあるのだ。

そこでプレヒートをするにあたっては手持ちのガストーチやシングルバーナーを用いて余熱するのがベターである。
またはプレ皿にアルコールなどの燃料を入れて、ミスト状の灯油を噴出しながら火を付けても少し時間はかかるがプレヒート出来る。

ここまで来れば後は点火するだけなので、慣れれば10分以内で点火することが出来るかと思う。

アフターサービスが素晴らしい

武井バーナーは東京にある町工場なのだが、地方に住む私も何度もパーツを買ったりオーバーホールをして頂いた事がある。
パッキン一つから送って頂ける所もとても好感を持っているのだが、何よりもメーカーの方の商品に対する思いに感服してしまう。

以前プレヒートをしながらポンピングをしている時に圧がかかりすぎてタンクに穴をあけてしまった事があり電話で事情を伝えると、修理用のタンクの製造をしておらず新しい替えのタンクの在庫が無い事を伝えられた。
しかし工場にある古いタンクを安値で譲って頂き、オーバーホールもされて組みあがったパープルストーブが送られてきたのだ。
やはり長年使って曲がっている所や色々と直す所も多かったようなのだが、電話を頂き丁寧に説明して頂いたのだ。

そこから以前にも増して自分のパープルストーブに愛着が沸き、これからもこのパープルストーブを使い続けようと思わされたのだ。

先ほども記したようにかなり酷使してきた私のパープルストーブだがメーカーさんのアフターサポートが無ければ買い替え、もしくは別のストーブを買っていたかもしれない。

キャンプを予定していた日に寒波がきたり吹雪に覆われてしまう事はよくある事かと思う。
3シーズンのキャンプであれば大雨に覆われてしまう位の事で済んでしまう様な事でも、大雪や吹雪の中では話は変わってくるのだ。

そんな心細いテントの中で別次元の暖かさを与えてくれるパープルストーブに暫し癒されてしまうのは、ストーブそのものが持つ力も当然あるのだが長年連れ添った相棒の様な信頼関係を築いているのではないだろうか。

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