森の中で風の音や鳥の鳴き声を聞きながら料理を楽しみ、ハイキングの疲れを癒すべくコーヒーをすすり自然を体感する。
そんな贅沢な時間に邪魔をせず静かに燃えるアルコールストーブの無音の炎が、限りある至福の時間を盛り立てる。

スウェーデン生まれの武骨なアルミのコッフェルは自然の中にとてもマッチし、静かに湯気を上げながら森の一部のように出しゃばらない。

人混みや騒音を避けるかの様に自然の中に逃避行を繰り返し、森や動植物と時間を共存するためには自然のルールの様な何かを守りお互いに受け入れなければならないと思う。
それは難しい事はなく、大きな音や大きな声を出し動物を脅かしたり使った場所を汚したままにしたりせずに自然に対し当たり前の気遣いをすれば良いと考えている。
すなわち、人間も自分の中に自然を取り込まなくてはならない様に思う。

人間も自然の一部であり、自然を楽しみに山や森に入ることは誰もが許されているのだから。

積雪のある冬季にはガソリンストーブのエンジン音の様なあの音がとても心強く感じるのだが、その他の季節は出来るだけ森を刺激せずに静かに過ごす事を心掛けている。
そんな私はよくハイキングや森歩きにはストームクッカーを持っていく。

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ストームクッカーはSサイズとLサイズがあり使う人数や用途で選ぶのだが、ハイキングやソロキャンプにはSサイズが十分な大きさのように感じる。

私がLサイズを使う時は、家族や友人を連れて森で遊んだり釣りをする時に持っていく。
その他には、冬のソロキャンプの時によくチゲ鍋やもつ鍋を作る際に多めに作る事が出来るので冬場はLサイズをよく使う事が多い。

やはり使い勝手は大は小を兼ねるのだが、いかんせんザックの場所を使うので私はSサイズがお気に入りなのだ。

ストームクッカーの構造についてだが、アルコールストーブを乗せる土台と風防兼五徳を繋げるとストーブの土台は完成する。
ストームクッカーはこの風防と折り畳みに出来る五徳の仕組みがとても素晴らしく、アルコールストーブを使うコッフェルの中では断トツで風防効果が高いと云える。
そして、ソースパンやケトルを浮かせる状態で火にかける事が出来るこの五徳もとても良く考えられている。

ハイキングで山頂まで登ると強風が吹き荒れている事が良くあるのだが、このストームクッカーの作りなら風の影響を最低限に抑える事が出来る。
下の土台の空気穴を風下に向けておけば風の侵入を多少抑える事が出来るので、あとはマッチを風防の中で擦りそのままアルコールストーブの中に落とし入れてしまえば大概は火を点けられる。

野外での料理の一番の大敵は風だと考える、その点を踏まえればストームクッカーの風防効果はとても頼り甲斐のあるものだ。

そして蓋を兼ねたフライパンについてだが、他のコッフェルにセットになっているフライパン等に比べて大きさも十分あるので使いやすい。

どちらかと言えば料理でフライパンを使いたい時にストームクッカーを持っていく事が多い事から、やはりフライパンの性能の良さが伺える。

なので、インスタントやフリーズドライ食品で簡単に食事を済ます様なシーンにおいては只々嵩張り、大げさな道具になってしまう。
しかし飯を炊き、汁を煮込み、メインのおかずを作る様な一汁一菜の食事を作るシーンにおいてはソースパンが二つ付いているこのストームクッカーはこの上なく使い勝手の良い道具になるのである。

そして飾り気のないシンプルな外観の風防の中にケトルを乗せた姿がとても美しく、自然の景観を損なう事無くより自然との一体感を体感できる。

一般的なコッフェルと比べて、確かに大きさや重量は嵩張り荷物になってしまうのでハイキングには不向きな所もあるのだが、それでもこの愛おしい姿は山や森などの美しい景色の中で一際輝いて見えるのだ。

山道具としては大きさもあり、正直に贅沢品であると思う。替えはいくらでもあるし軽くて小さくて良い道具はいくらでもある。
しかし私はこの頼れるストームクッカーが好きなのだ。

北山耕平さんの、自然のレッスンと云う本のイントロダクションの一文でお気に入りの文章がある。

ありとあらゆる西洋文明の恩恵をたんのうしているにもかかわらず、それでもわたしのこころが言うのです。
良いものをすこしだけもっているほうが、良くないものをたくさんもっているよりもましなんじゃないだろうか、と。
きっとこころはほんとうのことを知っているのかもしれません。

この言葉を読んだときに、人間として自然に生きるにはシンプルな発想で自分の思う事を素直に楽しみさえすれば良いのだと気づかされた。
そして道具においても、いろんな物を組み合わせて自分だけのオリジナルのコッフェルを各々が持っていて日々スタッキングや重量などを考えて工夫を凝らしている。それも素晴らしいが、たまにはシンプルに細かいことは考えずオールインワンのストームクッカーの様な本当に良い道具を持って森や山に出かけてみてはいかがだろうか。

いつもよりほんの少し嵩張ったザックを背負っていても、本当に愛着のある道具は山で過ごす時間を彩ってくれるかけがえのないバディーなのだ。

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