パチパチと音を立てながら、まるで飛び方を忘れた羽虫の様に不規則に跳ね上がる火の粉を眺めていると無性に心が落ち着く。

暖をとる為に焚いたはずの焚き火の揺らぐ炎を無心で見つめながら時間を忘れ、気づけば周りは暗くなり顔がヒリヒリと焼けている。
そこで私は静かな森の中でこれから一晩を明かす事を思い出し、胸の高鳴りと孤独感を同時に感じるかの様な言い表す事の出来ない感情が沸き上がる。しかし、その感情はとても前向きなものなのだ。

木が揺らぎきしむ音やたまに遠くから聴こえる動物の鳴き声を聞き、仮宿と云えば少し頼りない使い古して日焼けしたカーキ色のテントに身を任せ今夜も何事も無く眠れるようにと心の中で祈る。

ランプに火を点けマントルが燃えると温かみのある暖色の優しい灯りがそれまでの孤独感をかき消し、その暗闇の中で私とテントだけが灯りに照らされている。

その光景を見ると、世界の中心に居るかの様な錯覚を起こす。

私は人間も自然の一部だと考えるのだが、それに気づかせてくれたのはソロキャンプを始めてからの様に思う。
野営場に布一枚で仮宿を立て雨風をしのぎ煮炊きをしながら一夜を過ごす、ただそれだけの事を心の底から楽しみながら生活の知恵や自分なりの哲学を育むことが出来る。

そんなソロキャンプの相棒とも云うべき私が使っているテントの話をしようと思う。

ソロキャンプの相棒『テント』

先ず、私がキャンプに行くのは冬から春にかけての季節が多い。
理由は単純なもので人と虫が少ない事と暑さよりも寒さを和らげる事の方が容易であるからだ。
暖をとるには焚き火やストーブを使うのだが、テントを使う上で私が一番気にかけるのが幕内の結露である。それを解消するためにテントの素材から選ぶ必要があるのだが、そうなればコットンやポリコットンに行き着くと思う。

素材を限定してソロ用のテントを探せばある程度絞られてくるのだが、私が愛用しているテントはテンマクデザインのパンダTCである。

このテントはポリコットン製のワンポールテントでデザインも気に入り発売してすぐに購入したのだが、一人用には十分な大きさで未だに使い続けている。

先ずはポリコットンについてだが、コットンに比べて軽さと多少の撥水性がありポリエステル等に比べて結露がしにくいのが特徴である。

例えば雨の日にレインウェアを着て歩くと雨を弾いて雨の侵入を抑える事が出来るが透湿性があまり良くないために体温を外に発散できずにレインウェアの内側が結露を起こすのだが、コットンの場合は雨を吸い込むので肌に触れると冷たいが透湿性が良いので汗をかいても体温を服の外へ発散することが出来る。
この事を踏まえると外気温と幕内の気温の差によって結露が発生してしまうのだが肌に触れないテントの場合はとても快適に過ごす事が出来るのだ。

また冬場などにテント内でストーブを使って幕内を温める事で雪で濡れたテントも乾燥するので温めながらテントを乾かすことが出来、一石二鳥の効果が生まれる。

次に大きさについてだが、270cmの正方形で高さが170cmあり大きいとは言えないが一人用には十分な大きさで私のソロキャンプには丁度良い大きさである。
これは一例だが奥にコットを置き入り口側にテーブルと椅子、空きスペースに道具箱を置いてもまだ余裕がある。

そしてワンポールテントの利点でもあり欠点でもある真ん中のポールも、ランタンやバッグ等を引っ掛ける事が出来る。この他にも小さなランタンを引っ掛ける事が出来るフックの様なものがあるので、そこに細引き等のロープを張れば上着や洗った食器等を吊るしておく事も出来るのだ。

また夏場なら殆どの時間をタープの下で過ごすのでテントは寝床になれば良いのだが、冬場のキャンプでは暖をとったりする兼ね合いでテントの中で過ごす事が多いのでグランドシートの無いこのテントはとても過ごしやすい。

また夏場に使う際も、ポリコットンの特性で濃い日陰を作れるのでテント内の方が涼しい事が多い。

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まさに夏は涼しく冬は暖かいオールシーズン使える万能なテントと云える。

よくパンダTCの購入を検討している方で一番の悩みどころでスカートが付いてない事を懸念される方が多い様に思う。
確かにせっかくポリコットン素材のテントを買うのだから冬キャンプや雪中キャンプを楽しむためにスカートが付いていればとても有難いのだが、私の場合はそこまで気にならない。むしろ全てが用意周到で完璧な物を手に入れると満足してしまい、知恵を出したり工夫をする事をお座成りにしてしまうのだ。

なので私はビニールシートを切ってスカートを作ったり、ポールを短くして高さを下げて地面とテントの隙間を無くしたりしながらオリジナルのテントに仕立て上げている。
ポールを短くしたのは大雪が降った時に雪の重みに耐えきれずポールが折れてしまったので、副産物的に思いついたのだ。
ポールが折れた際にテントの天井に穴も開いてしまい、テープと裁縫道具でリペアも施してある。

道具を長く使うには必ず手入れや補修が必要になるものだが、手直ししながら使う事で愛着が沸き本当の意味で自分だけの道具になって行くと私は思う。

そんな愛すべきパンダTCに身を任せ、また私は真夜中の静けさの中で星空を眺め自然と向き合い思いに耽るのだ。

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