こちら記事では、「戦闘糧食」、通称「ミリメシ」とその応用について紹介します。
※ミリメシ = ミリタリーメシの略。多くは「訓練時に兵個人が携行する食料」の意で用いられる。

自衛隊メシ「戦闘糧食」の種類と違い

「自衛隊のメシ」というと、災害派遣等のテレビ報道などで見かけることがある、濃緑色(正確には「JIS Z8721の4に基づく記述で7.5Y 1/3」)のパッケージを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

こちらがまさに「戦闘糧食」でして、
・缶詰タイプの「戦闘糧食I型」
・レトルトパウチタイプの「戦闘糧食II型」
があります。
※陸上自衛隊におけるI型の調達は平成28年をもって終了しています。

I型(通称 缶メシ)は1954年(昭和29年)に採用されました。
容器は缶切りで開ける構造となっており、今どきの主流「プルトップ」ではありません。
これは、「木箱に入れて飛行機から投下しても損壊しない構造・強度」という要求によるものでした。

II型(通称 パックメシ )は1990年(平成2年)から導入が始まり、改善を重ねながら、現在でも調達されています。
「サ〇ウのごはん」のようなものが2つとレトルトパックのおかず1つのセットで1食分、これが外袋(真空パック)に収められています。
開封して食べる際、刃物や皿等を必要としないのが、I型からの大きな進化。
投下装置の進化もあり、今ではII型でも投下に対応しています。

缶メシ・パックメシとも「ごはん」については、事前に一度過熱しておくことで、夏場で数日、冬場で半日は「もっちりライス」が食べられるようになっています。
II型のオプションとして、2001年頃から「加熱剤」(即熱型高温カイロ)が配布されるようになり、「いつでも温いメシ」が食べられるようになりました。

「戦闘」糧食の名前通り、「戦闘時」の利用を念頭に、「単体で完成する食事」として設計されたミリメシ。
実際に使い、食べてきた者として「アウトドアライフに共通するかな?」と感じた点は
「重量」「容積」「調理性能」です。

これらの要素については、ミリメシも市販品も「ほぼほぼ同じ性能」を持っています。
さらに「味」の面では市販品がぶっちぎりの勝利です。

ということは、スーパーのごはんで「戦闘糧食風」が組める!
自衛隊さんと同じくらい山で頑張れる!

ということで、自衛隊メシが役立ちそうな状況を考えてみます。

※他に耐久性や味付けといった見どころもあるのですが、これは「自衛隊(軍隊)特有」の事情からの要件ですので今回は割愛します。
※乱暴に扱っても損壊しない、おいしいとすぐ食べてしまい必要な時に無い 等

自衛隊メシが通常のアウトドアで役立つ状況はあるのか?

オートキャンプや、大勢集まってのキャンプ等では、パックメシの使いどころはなかなか見当たりません。
現地で食材から調理したほうが楽しいですし、そちらのほうが「おいしいもの」が食べられます。

しかし「ソロ、トレッキング40km、2泊」等のようにに、装備について「重量と容量」による制限が加わると、パックメシの性能が活きる場面が出てきます。
※「ソロ」はあまりお勧めしないのですが、分かりやすい例として使っております。

例えば。
コース上に水場が無い、或いは水の補給が確実ではない場合は、自分で「水」を持ち歩かなければなりません。
水場があれば水筒で足りていたものが、10リットルタンクが必要になる事もあります。

パックメシ1食分で、重量が約850グラム。
普通の人向けの量を市販品で組むと、1食重量が500グラム、1日分で1.5キログラム程度になります。
これを事前に加熱しておけば、「そのまま食べられる」うえに「食器が必要ない」。
そして、「調理の必要が無く、洗い物が出ない = 水を消費しない」。
さらに、「どこでも食事がとれる」

同様の事を「食材+食器等+水」で実現させるためには、重量はどのくらいになるでしょうか。

もちろん、飲料としての水はどちらの場合も必要ですし、山頂で温かいコーヒーを飲むために水・調理器具・熱源は必要になります。
レトルトパックの強度を考えると、パッキングに工夫が必要になります。

昨今はキャンプ場や登山道の整備も進んでいますが、自然相手だと何が起こるか予想できない事も多々あります。
パックメシの「メリット」が役に立つ場面も想像いただけるのではないでしょうか。

こういったことを考えながらザックを組み立てるのも、アウトドアの楽しみ方ではないでしょうか。

「自作パックメシ」の注意事項

上記「普通の人向け」「市販品」で組む「自作パックメシ」ですが、注意して頂きたいポイントがいくつかあります。

・現地で温める(温められる)のか否か
ハンバーグ、温めないと、もたれます。

・汁物の取り扱い
サ〇ウのごはんパックに、レトルトカレーが入りきれないことがあります。
また、温かいカレーやシチュー等は「受け皿」が無いと食べづらいため、検討する必要が出てきます。

・踏んでも破れないがつつくと穴が開く
ミリメシは少々丈夫に作ってありますが、市販品は「角があるものと一緒にザックに入れておいたら、装備のカレー和えが出来上がった」ということも…
タオル等でパックをくるむ等の対策を取ったほうが良いでしょう。

・開封後は中身の残りがタレる
空き容器を入れる「ゴミ袋」必須です。
自衛隊さんのように「埋めて帰る」はやめましょう。
※陸上自衛隊においては「訓練において必要な行動」として「痕跡の消去・埋設」を行っています。

トレッキングや登山において、食事は重量、容積、そして熱量を考えて決めなければなりません。
その際、パックメシは十分検討するに足りるメニューです。
あなたの装備に加えておくと、きっと役に立ちます。
※ちなみにII型は、1食あたりおよそ1,100キロカロリー弱、1日で3,200キロカロリーの設定になっており、一般的な成人男性所要熱量の3割増しです。

本物と同じ構成のミリメシパッケージを購入する

自作パックメシは「メニューを組むのが大変」「スーパーで買い物をするのに慣れていない」と感じる方、朗報です。
実物のミリメシ製造メーカーからは「本物と同じ構成」の、他のメーカーも「ミリメシと同等の」商品が、パッケージで販売されています。

これら民生品は主に「非常食」「防災食」として流通していますが、アウトドアの観点でミリメシを超える性能を持つものもあります。主に味の面で。

興味のある方は、「武蔵富装」「カネハチ早川商店」「レスキューフーズ」等で検索してみてください。
価格は少々張りますが、便利なセットが組まれています。
これらを参考に、オリジナルミリメシを考えてみるのも楽しいですよ。

時には極限状態での活動を求められる「自衛隊」。
今回は「戦闘時のごはん」を紹介させていただきました。

他にも
・野外訓練拠点で食べるごはん(調理法や「片付け」等、多人数キャンプ向けのまめちしき)
・駐屯地で食べるごはん(自衛隊メシ個人的ランキング等、完全に趣味的なまめちしき)
などの隠し玉があります。

メシ以外にも、自衛隊装備でアウトドアに役立ちそう(かつ類似品市販市販品がある)ものが多数ありますので、そのう紹介できればと思います。

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